もう、もう十二月なにやらワクワクする季節

2015年12月04日

スペインのアニメーション『しわ』

はい、こんばんは。          雪華ホーム

成田山参道の日々草CIMG7983





原題:ARRUGAS
2011/スペイン 上映時間89分
監督・脚本:イグナシオ・フェラーレス
原作・脚本:パコ・ロカ
脚本: アンヘル・デ・ラ・クルス、ロザンナ・チェッキーニ
音楽: ナニ・ガルシア
出演:ジェーン・レビ、シャイロー・フェルナンデス、ルー・テイラー・プッチ、ジェシカ・ルーカス、エリザベス・ブラックモア

スペインの漫画家パコ・ロカによる「皺」(第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞)を原作とした長編アニメーション。
元銀行員のエミリオは老いて認知症の兆しがみられるようになり、養護老人施設で暮らすことになります。
お金にうるさく抜け目のない同室のミゲルや、面会に来る孫のためバターや紅茶をためている女性アントニア、アルツハイマー症の夫モデストの世話を焼くドローレスら、個性的な面々と生活をともにすることになりますの。
若かったとしても日常がこんなに激変することですから、緊張しますわね。
更にものすごい環境に直面するのですが、決して暗いアニメではありません。
そんなある日、エミリオはモデストと同じ薬を処方されていることから、自身がアルツハイマー症であることを知り……。
スペインのアカデミー賞と言われる第29回ゴヤ賞で最優秀アニメーション賞、最優秀脚本賞を受賞。監督は同国の若手アニメーター、イグナシオ・フェレーラという人。
お若いらしいから、更にすごい。
地味な内容ながら、ジブリからの発売ですから、マスコミにも広まったかもしれません。

この作品や、しがない手品師の放浪を淡々と綴った『イリュージョニスト』、ジャック・タチ脚本、シルヴァン・ショメ監督のアニメーションも最近観たなかで大人の鑑賞に適したすばらしい作品でした。生涯心に残る作品というものはたくさんはありません。が、これはその一つになるでしょう。

ついでに気をよくして、日本の『涼宮ハルヒの消失』も見ました。すごく良かったです。良かったんですが、
『ビューティフル・ドリーマー』のラムちゃんのキャラは最強だったなあ、
と30年くらい前のものを思い出したりしまして。似てるよ。
SFの新らしいアイデアはそうそう出るものではないのかもしれませんね。
大きいお目目の美少女アニメからそろそろ脱却する作品が、たくさん出てきてもいい頃かもしれません。

「しわ」というアニメは、その点快挙です。斬新だと思います。
私だんだん認知症!という言葉が人事とは思えなくなり、「大丈夫か? 自分?」と、ときどき考える今日この頃でございます。
この映画を観ていると、年をとることの恐怖を違った視点で見てみたくなります。
命を存えているならば、次第に機能の一部を失うこと、わからなくなることは当然のことです。
無くしたものを数え上げるよりも、今できること、残っているもので、なんとか楽しく「やりくり」していくことが、
大人の知恵というものなのだと思わせられます。
冷蔵庫の残り物で、ちゃちゃっとうまい料理が作れる人みたいに。
実家に帰って、一階から二階へと階段上をがってから、
「はて、何をしにきたのだっけ?」なんてね、忘れちゃうことがあるんです。不思議なことに一階にもどると途端に思い出しますよね。どういうメカニズム? もっと早く思い出してくれないとね……と自分にイライラします。
兄曰く
「日々新しい自分を発見することは、楽しいって思った方がいいよ」とのこと。
退化していようが、今までに経験したことの無い状況という意味では、これも新しい出来事かもしれません。

また記憶が薄れることは、耐え難い悲しみを感じはしますけれども、
一方で現実社会から徐々に引いていける土壌を作ってもくれます。まわりも猶予の時間を持てるはずです。

記憶って、何でしょうね?
『明日の記憶』という傑作映画もありました。
あの映画でもそうですが、介護する側の人だとか家族の視点ではなくて、当事者である本人自身がどう感じているのかを描いているところが素晴らしい。実際には、そうなった方のことなどわかるわけはないのですよ、もちろん。リアルじゃないかもしれない、ひょっとしたら。ただ、そうなんじゃないのかしらん。こんなんじゃないのかしらん……というところが、つまりルポルタージュではなく創作であり芸術なわけですもん。

記憶が無くなれば、忘れたものは存在すら無かったものになると私は思うのです。それは残念なことですが、最後はやっぱり、全てを持って行くわけにはいきませんもの。
どんな状況であれ、本人の生き方が全うできますようにと願うのみです。
見送る側、忘れられる側はほんとに切ないですが、これも順番制でして必ず回ってくるものです。

これもあくまでも、想像ですがね。
人間を人間たらしめているのは、記憶より感情なのではないかと思うことがあります。
認知症の方に、それは違うよって記憶違いを指摘することは、現在ではいけないことだというように、
広く知られるようになっています。何かを否定されたときに、どうも、その論理や内容は忘れるのだそうですが、
怒られた! とか、馬鹿にされた! というような感情は深く刻まれるようなのです。
思いや感情が、その人らしさを最後に残すのかもしれません。
どこに行ったのか忘れたけど、ああ、いい時間だったなと思えればいいのかなと。

映画の中で、ずっと窓際の席に座って外を眺めている女性が登場します。
オリエント急行に乗って、イスタンブールに向かっているところなのだそうです。
……そういうのって、ちょっと羨ましいです。

ブラボー!!

大手町のビルで↓
クリスマスイルミ丸の内クリスマスツリーCIMG8012




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