クリスティ読破10『七つの時計』オリンピック2020

2021年07月20日

『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』一見の価値あり

はい、おはようございます。          雪華ホーム


20210719ひまわりみたいなの


原題はThe Aeronauts 気球操縦者達。2019年に公開された米英合作。
監督はトム・ハーパーさん、原作リチャード・ホームズさんですが、
特筆したいのは、制作がアマゾンスタジオです。
アマゾン凄いです、
訴えられているように税金はいっぱい払わないといけないかもしれませんが、
コンテンツを流通させるだけの企業ではなくなっているのですね。
この映画の大方のネット上での評価は低すぎると思います、
アドベンチャー映画の金字塔‼ と言って過言ではない。
史実と違うなどとのたまう輩は、放っておくべしでございます。創作ですから。

オープニングのほんの十分ほどでしょうか?
ヒロイン役アメリアのプレゼンの素晴らしいこと、と言ったら。
「アメリア、待ってました」の声が上がること必至。
気球を上げるための資金集めらしいのですが、エンターテナーぶりが圧巻。
あれだけで、見る価値アリでございますよ。
私でもあの場にいたら、少額のスポンサーになったことでしょう。

その後全編気球上だけの映像ですが、退屈させません。
今までに気球をこんなにクローズアップした作品があったでしょうか。

1862年のロンドンを舞台にしています。気象学者のジェームズは天気予測が可能であるという考え
の元に、気球で一万メートル上空まで登り、そこで気象に関するデータを手に入れようとしていたの
です。命知らずです、はい。
英国気象庁は1861年には、新聞に天気予報の提供を開始したそうですから、
理論上の予測はしていたのでしょうが、ジェームズはきっと現実主義者だったのでしょう、
あるいは主流とは違う現場にいた人だったのかと想像します。
飛行機も気象衛星も開発されていない時代、気象予報の精度を高めるためには、
地上での気象観測だけでは不十分だと考え、気球を思いついたとのことです。
理解も資金も得られない状況の中で気球を飛ばすのは、至難だったでしょうが、
どんな時代も先駆者は異端児です。同じ未来を見る人はなく孤独でしょう。
しかし凡人と同じ発想では何も新しい事は成せませんわね。

ちなみに日本では1877年に、島津製作所の創業者島津源蔵(初代)が日本初の気球による
有人飛行を成功させているそうです。これもびっくり。

ジェームズはあるパーティでドレスアップしたアメリアと出会います。
当時世界各国では気球での高度到達記録を競っており、彼女はフランスが持つ
高度7000メートルの世界記録を超えたいと野心に燃えていました。
そんな二人がいよいよ飛び立つのです。

映像が素晴らしいです。
雲の上にプカプカと浮かぶ気球(こればっかりは乗ってるご本人には見えませんね)、
眼下の気球の影。
飛行機から見るよりも低くて、くっきりと見える地上の景色。
光の当たり具合でさらに厳かにそびえる山々。
空の青が、もっと深い青に変わり、コントラストで輝く雲の美しいこと。
幻想的な黄色い蝶々の群れ。あの高さにやってくるんですね。
雪の白い粒の静止画像。見たことのない景色に魅入られます。
実際もこんなんだったのでしょうか。わくわくします。

しばしの静寂と世界の美しさを堪能した後にやってくる自然の過酷さ。
なんせ、こんな高度に上昇したことなど無いのですから、
今では当たり前かもしれませんが、当時としては想像もしない試練に見舞われます。
後半は一転して大スペクタクルを見せてくれます。
まさにハラハラドキドキの臨場感の作り方も一級品です。
死にそうになってるジェームズを尻目に、アメリア姉さんの大活躍シーンのてんこ盛り。
登っている気球のてっぺんに上ったり、ものすごい勢いで落下する中ロープを切ったり、
いつ、死んでもおかしくありません。
大体は史実を元にしているみたいですから、ジェームズの相棒はやり遂げたんでしょう。

アメリアはウィキにもあるように、架空の人物で本当は男性だったそうですが、
その改変が物語上、いささかも壊していないどころか、女性であった方がエンタメとして
優れた要因になっていると思います。アメリアの内面的な再生やこの二人の愛の行方なども、
加わり面白くなっています。
あと、年齢も史実よりもずっと若くなっていますしね。
何よりも、英国で初めての単独気球飛行を行ったマーガレット・グレアムや、
アメリカの気球専門家メアリー・マイヤーズ、
ソフィー・ブランチャードというフランスの気球操縦士へのレスペクトや引用もあったようです。
名前から私は映画で見た、女性として初めて飛行機での大西洋単独横断を果たした飛行家の
アメリア・イアハートを思い起こしましたが、参考にしているのだと思います。
原題にあるように、The Aeronautsはそうしたたくさんの先駆者達を含めているかもしれません。
そうだとすれば、女性であってもおかしくはありません。
さらに、この映画の成功で私のように史実を調べようと多くの人が考えますから、
実在した人物も浮かばれようというものでございます。

一方で、受け身の感動はしますが疑似体験であることもよく知っていますよ。
最後のナレーションで、『わたし達の多くは傍観者』とあります。
頑張ってる人に『頑張れー』と声援を送りますが、自分の方が頑張れ(笑)ですね。
劇中でアメリアも言います、『世界を変えるには、まず自分を変えなくっちゃ』と。
耳が痛いのでございます。

アメリア、ブラボー!







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