暖かいねクリスティ読破2.『秘密機関』

2021年03月24日

クリスティ読破1.『スタイルズ荘の怪事件』

はい、こんにちは。          雪華ホーム

20210313研究会





アガサ・クリスティー作品に魅せられて、何十年もの歳月が過ぎました。
100冊を超える作品のほとんどを読んだはずですのに、覚えていないものも多数。
最近再読するようになり、全く違う感想を持つものも多数ありました。
記憶力の無さと未熟さでもって、何度も同じ作品を楽しめるのは良いことだと開き直ることと決め、
アガサの全作品の感想を綴ろうかと思い立った次第でございます。

霜月蒼さん著の『アガサ・クリスティー完全攻略』はポアロ編、マープル編などのくくり別に、
進められていましたが、私は刊行年順に拘りたいと思います。
アガサの生きた証としての作品から生涯をたどりたいと考えるからです。
もっとも、全盛期には数冊並行して書いていたり、死後に発表するように依頼された作品も、
ありますから、いくつかの例外はありますが。
宜しければ、ご一緒に読書会といたしましょう。

注意点がございます。ご自身で読んでからこのブログをお読みください。
霜月氏は著作の書籍で生計を立てられており、読者の楽しさを奪うべきではないとのプロ意識から、
御本ではたいへんな苦労のネタばれを回避されています。活字の黒塗り部分がいっぱい。
ミステリーである以上、どんなネタばれも作品の感動を損なう可能性大でございます。
巻末の解説はもちろん、裏表紙のあらすじでさえ地雷となる場合があります。重々承知です。
そうではありますが、アガサ作品の場合犯人やトリックがわかっていてさえ、
3度めに読んでも面白い部分もあります(個人の感想)。
ネタばれでないと、核心に迫れないという私の表現力の問題もあります。
氏と違って何より私は書籍で生計が傾いているという読者の立場、
ブログ読者なんぞ知ったこっちゃない……、という荒くれもの。
ネタばれ全開で参りますので、ご容赦下さいませ。
このブログ内の映画の感想と同じです。

さていよいよ、スタイルズ荘でございます。
1920年に発表されたアガサ処女作で、この時三十歳。昨年が100周年記念だったのですね。
自伝によると、かなりの出版社に原稿を送っては突き返されるというのを繰り返し、
そのうちの一社から1年ぐらいの後、出版の手紙が届いたとのことでした。
現在私達が読める状態のものといくらかは違っていたとしても、
こんな名作なのに当時簡単には理解されなかったことがわかります。
作品を発表してからでさえ、数冊はさほどの売れ行きではなかったそうです。
十八歳の頃に書いた習作をフィルポッツに読んでもらえる幸運(上流階級のつてか?)もあり、
会話表現が優れているという励ましの手紙を受け取っていますから、
仮に贔屓目としても、本人にはたった一人でも絶大な味方だったはずです。
どれほどの力となったでしょうか。
理解しない人数万にとっては、たったの数年後時代が解決しました。
イギリスの当時は(日本ではだいぶ遅れていて今でも多少あるかも)
オドロオドロしい怪奇めいたもの、気持ち悪いもの、
やたらショッキングな犯罪、女性差別的風潮の多いものをミステリーと呼んでいた中での、
アガサ登場ですから、なんだこれは? となったものと想像しています。

今私が手にしているのは、2015年17刷という比較的新しい版で、
翻訳がとても読みやすく、アガサの快調な筋運びを堪能できます。
原作で楽しむ英語力がありませんから、翻訳者様様なのでございます。
語り手はヘイスティングズで、
戦傷を追い帰国し、スタイルズ荘というお屋敷で過ごすことになるいきさつを
ザっと説明し、名探偵ポアロはヘイスティングズの回想の中の人物としての初登場です。
この第一章の中に、容疑者となる登場人物のほとんど全てがとんとんと紹介されますの。
不穏な空気は爆発寸前。
もちろん、犯人がシャーシャーとした顔でいます。
登場人物一覧表をちらちらとめくり返しながら、ここはじっくりと観察です。
ひとつ問題は、ニックネームかなあ。西洋は名前がややこしいですねえ。

スタイルズ荘は、アガサの住居の一つにも名付けていたように記憶します。
ポアロ最後の事件にも、ここにまた戻ってきます。凄く思い入れのある建物なのです。
ところが、お屋敷の構造ですとか内装ですとか庭がどんな風かなどの描写はほとんどありません。
無かったと思います。
書くほどのことでもないということでしょうか? 
みんな、これが普通なのでしょうよ……きっと。
事件現場の図面はありますよ、ミステリー小説の常としてね。
私はお城やお屋敷にはとても興味があります。重厚な調度品やお宝も見てみたいなあ。
貴族の暮らしぶりなども知らないですから、そこは想像するしかありません。
ドラマや映画が参考になるかもしれませんし、
読んでいくうちにだんだんと知れることも多々ありました。
「今日のお茶はどこだ? 外か中か?」
「外、家にこもってるのはもったいない天気」
と、本作の中にあるように、お庭でのティーパーティが一族の日常なのです。
一族、ってワクワクする響きでございます。
私は、パソコンに向かい一人でコーヒーをすすっているというのに。
貴族たちの日常が既に違和感なくみんなが集まれる場となるわけですね。

第一作めで、その後のアガサの得意技として自他共に認めるであろう要素が既に詰まっています。
目に見えている現実は、本当に真実なのか?
これが、一番のものじゃあないでしょうか。
長きに亘って手法がマンネリに陥らずに、多種多様に読ませてくれます。
スタイリッシュで、明るくて、健康的な展開の中にというのが驚きでございます。
本来暗い犯罪小説と微妙なバランスを持てていることに感服いたします。

ただ、恐ろしく精巧に美しく構築されていますのに、
スタイルズ荘は、かえって記憶に残りにくい作品のように感じるのはなぜでしょうか。
たぶん十冊目ぐらいまで読み進めると、これって忘れると思いますよ(苦笑)。
まあ、私だけじゃない……ふふ。

ブラボー!!



この記事へのコメント

1. Posted by Angelunsog   2021年03月26日 08:27
3 borno governor https://fmohconnect.gov.ng/monitoring_evaluation.html

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