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2019年10月12日

『グリーンブック』納得のアカデミー賞

はい、こんにちは。          雪華ホーム
赤毛のアンjpg

今現在は近づく台風にびくびくしている所です。あのコキアはどうなっているものやら。



映画祭で受賞する作品というのは、とかく強烈なシーンを作ることで、
芸術でござーい、というものが多いように感じるのです。
ところが、今回の『グリーンブック』はいい意味で驚きの受賞作品だったと思います。
エンタメ作品のど真ん中と言っていい映画でも、優れた脚本演出演技があれば正当に評価される
アカデミー賞関係者の映画力の高さを思い知ることができましたから。
黒人問題を利用したか……という批判には、正直なところ多少あるかもしれません。
「それのどこが悪いんでしゃろなあ」と反論できるだけの、
主のテーマはそこではないからです。実に上手く利用しましたねえ。
時代背景も良かったし、白人対黒人という図式だけではなくてイタリア移民という白人種の中でも
異端視されている白人と、白人からも黒人からも疎外されている黒人という点もうまい。
どちらも、居場所がないという点では同じですから。
1962年が舞台。ホワイトハウスでも演奏した天才ピアニストは黒人でドクター、
そのお抱え運転手は白人のトニー。
ケネディによる公民権法が制定されたのは、1964年。大変な時代だったのでしょう。

最近で黒人差別問題を深く掘り下げて秀逸だったのは、
『ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』でしょうか。
単なるラブコメから社会派へともっていった技ありの、現代の女子の物語でした。

『グリーンブック』を見ていますと、
オースティンの『高慢(プライド)と偏見』を思い出すのでございます。
それぞれが個人の考えや主張をちゃんと持った成熟した大人であって、
それでも、と言いますか、それだからこそとも言えるかもしれませんが、
偏見に囚われているものです。
自分では気づかない、自分は正しいはずですから。
他人を受け入れる、愛する、親しく接するということは、
つまり自分以外の価値観に身を置くということに他なりません。
「ギャーッ」……ですよね。これは、ほんとに驚きの連続になるはずでございます。
抵抗だらけ、信じられないことばかり。
『グリーンブック』は、真の友情をそうやって築く見事なヒューマンドラマです。
並大抵じゃありませんがね。
二人の会話が笑えるし、時にグサッときます。

ドクターは上流階級のお育ちでやや神経質ですが、強い信念を持っている。
一方トニーはイタリア系白人で、見た目通りの用心棒をしていて無学でガサツな男。
二人に何の共通点も見出せません。
仕事上の必要のために高級キャデラックの密室でたった二人、
コンサートツアーのため南部を回るんです。
各地の風景の美しいことと、全編流れる音楽が素晴らしい。
上品と下品の同居ですからね、もめること必至。
トニーが黒人を軽蔑しているのは時代の流れ。
ドクターはこの粗野な男を心の中で見下している。
ところが、だんだんとトニーはドクターのピアノの腕にほれ込んできますし、
ドクターはトニーの心根の優しさにひかれ始めます。
ぶつかりながらも、長所を発見するんですね。

ドクターの笑顔がとてもかわいかったシーンがありました。
彼はフライドチキンなどのファーストフードを食べたことがありませんのね。
トニーは無理くり、うまいからって食べさせる。
一口頬張って、ニッコリ。
その後、この骨はどうする? って聞くと、こうやって車の窓から放り投げるのさと
トニーがやってみせます。良い子は真似をしないようにしましょうね
そうか、と真似する。
次にトニーはソフトドリンクの入った紙コップまで沿道に投げ捨てるんです。
これには、流石にドクターがダメ出しして、車を引き返させて拾わせるという一幕。
一歩近づいて二歩下がるというような面白いエピソードでした。

分かり合えるのは、言葉で言うほど簡単なことではありませんでしょう。
真実を見出したなら、心を改められる人間って素晴らしいです。私もそうありたい。
自らの過ち、偏見を認めることは偉大なことです。
そのための長い人生経験でしょうし、学ぶ意味があるのだと思います。

こんなハートウォ―ムなエンディングのアカデミー受賞作ってありましたでしょうか。
前向きに頑張ろうと思わせる後味の良い映画にブラボー!!

グリーンブックが何ぞや、とかストーリーなんかは、検索エンジンに任せましょう。
画面いっぱいに、どーっと項目が出てきますが、
そんな知識は、何の役にも立ちません。実際に見て感じてください。



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