池坊自由花テキスト楽しいよDVD『救いたい』震災後の仙台が舞台

2018年08月23日

DVD『ディア・ドクター』良作ですね。

はい、こんばんは。          雪華ホーム

墨田川の橋





西川美和監督が描く、無医村に駐在中の医師が起こした突然の失踪劇。
村唯一の医者として人々から慕われていた伊野は、
日々の診察その他すべてを一手に引き受けていたのです。

鶴瓶さんをその医師役に起用したのが、第一のお手柄でございますね。
慈愛に満ちたようにも、怖ろしい魂胆がありそうにも見える、
独特の笑顔が強烈に印象に残ります。
演技がすばらしく巧みなのか、地なのか、わかりませんがはまり役です。

法律から外れていれば、どうあがいても有罪でございます。
そんなことはわかりきったことでしょう。
ただ、どれほどの罪を背負わねばならないのか、
どれほど悪いことなのか、と思うこともあります。
法に触れるほどではなくても、悪いことというのは世の中にたくさんあります。
逆に法に触れるからと言って、必ずしも悪いことではないのではないのかと、
思うようなこともあることをこの映画は示しているのでしょう。

これは、もちろんフィクションですが、
片田舎に開業してくれる医師は皆無です。その厳しさと、本当の医療とは何なのか?
を突き付けてもいます。
これから、回復してどんどんよくなる可能性の高い子供や若者ではなく、老人の問題です。

映画の冒頭で、病人が倒れた! と知らせがあると、
伊野は取るものも取り敢えず、全力で家に向かいますの。
親しい者、近隣の者が見守る中で、息を引き取ったとみた瞬間。
彼は、覆いかぶさるようにして細い年配の男性を抱きしめて、
背中をさすり、
「よう、がんばった」って囁きかけるんです。
ちょっと、こんないい、お医者さんって、いますか? 
これだけで、私は涙が溢れそうになりましたもん
そうですよ、いつまでも生き続けるお化けはいないんですからね。
往生するのも楽ではありません、まわりはその様子を見ていたはずですから、
死ぬのは残念ですが、どれだけ、喜んだでしょう。
人に認められるのが、嬉しいのはきっと亡骸だって同じ。はず。
その言葉のワンテンポ後に、
今亡くなったと思った男性が、ゴホゴホと喉を鳴らして、目を覚ますんです。
(爆笑)
これは、もう、
死んだと錯覚した過ちというよりも、
神々しい医師が、三途の川から男性を呼び戻したに違いない……
みんなそう、思うんです。
いやもう、あっぱれな演技と脚本の勝利でございます。

国家試験を合格した医師だって、万能ではないのですから、

専門分野とそうでない分野も当然ありましょうしね。

素敵な役者陣が勢ぞろいしているのですが、
中でも、八千草薫さんの綺麗なこと。品のある方だこと。
前に、感想を書いた『きみにしか聞こえない』でも、いいおばあちゃん役でしたね。
あんな風に年を重ねることができるなんて、並大抵の努力ではないと思います。
役柄の中で、余命いくばくもないことを娘に黙っていてほしいと、伊野に頼むんです。
畑を守って、身の回りのことを自分で始末をつけたいと考えています。
自慢の一人娘は大きな病院の女医さんです。
勘づいて、伊野に詰め寄ることになるんですね。
最後には納得して帰ろうとするんですが、あまりの激務のために、
次に母親に会いに帰れるのは、1年後になるかもしれない。という言葉にギクリとします。

たぶん、ネタばれしてもたくさんの方はご存じでしょうね?

さあああ、どうしましょう。
今生の別れになってしまうかもしれないのですから。
鶴瓶さん演じる伊野は、免許の無い偽医者だったのです。
このまま黙っていたら、まだ見つからなかったでしょう。
突然の失踪劇は、保身ではなく、
母親の気持ちもわかるけれども、娘の気持ちも痛い程わかると、苦悩した挙句の
行動だったのです。
一目散に逃げまくり〜です。その姿はコミカルですが、心情は察するに余りあります。
これまでの自分の行ないについて、白日の元に晒すことを覚悟したわけです。
娘さんの元へ行くだろうと見越してのこと。

犯罪者に世間の目は冷たいですよ。一転しますものね。
あんなに、褒めちぎっていたのに、
「前から、おかしいと思っていました……」みたいな。
小市民の悲しい性、姑息なところでございます。
黒沢監督の『七人の侍』でしたっけ、『用心棒』かな。
ひとっこ一人いないと思っていたさびれた家々から、
殺し合いが全て終わり安全だと見るや、
ぞろぞろ村人が集まり出すというリアルな描写がありましたのを思い出します。

ディア・ドクター、いい映画でございました
ブラボー!!












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