夏といえば「ひまわり」仁木悦子! 日本ミステリー史上に輝く女王

2012年07月19日

すーぱーショートストーリー 5

はい、おはようございます。          雪華ホーム

昨日のスターチスに白い花がいっぱい咲いたよ↓
12-7-18スターチスの花咲いた



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2011年の秋からですが、NHKカルチャーセンター(梅田校)の『4枚小説を書こう』に挑戦中なんです。
講師は岡部義孝先生で、エッセイの講座もお持ちです。
半年の第1期が終わり記念文集も作ってもらい、↑写真の金平糖のご褒美(?)も頂き、来期もますますやる気満々の今日この頃でございます(まあ精神と、執筆力は別物ですがね)。

1600字という枠はたいへん短くて、とっつき易いかと思いきやとても難しいです。俳句や川柳などはその極致ですものね。通常のショートショートよりもさらに短くて、「すーぱーショートストーリー(通称SSS)」と岡部先生が名づけられました。教室では面白い作品がたくさんあるんですが、勝手に載せるわけにはいきませんので、ひ・み・つ。私の作品でお茶を濁して頂きたいと思っています。
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      『こちら加藤仁探偵事務所』     牧山雪華
         3.鳥は知っていた  

 夏の終わりの朝だった。仁は、姪の葵(事務所の受付をしてくれている)の友達で一人暮らしをしている麻美から探偵事務所ではなく寝ていた自宅に電話があった。8時10分前だ。
「ごめんなさい、朝早く。ぼたんちゃんがいなくなったんです。心配で死にそう」
「インコだったよね、そんなに遠くに飛んでいくことは少ないので、風下の方角を探してみて。それから、そう、『ぼたんちゃーん』って声を聞かせながら探して。あと、よく耳にしている音を鳴らしてもいいし。その間に僕は迷いインコのビラを作って、それから警察に遺失物届けを出してからそっちに向かうから。大丈夫、心配しないで。根気よく二人で探そう」
 仁は麻美を元気づけてから一連の作業を終え、髪も梳かずに、普段着姿で現場に急いだ。
麻美宅のマンションから道路を挟んだ向かいの古いアパート付近には黄色い規制線が張られパトカーが二台停まっていた。その一台から声がかかって、仁は驚いた。
「仁か? お前」
「なんだよ、一樹。久しぶりだなあ」
「警察の公務員稼業の方が楽だったんじゃないかい? ひでえ格好だなあ」
「まあ、そう思うときもあるよ」
 一樹は警察学校での同期だった。若い女性が浴室で腕を切って自殺したようだ。ドアにも窓にも施錠され深夜には死亡していたとの見方だ。仁は、手短に会話を終えた。
 近くの路上にいた麻美が仁を見つけ、今朝の様子を詳しく話した。
「寝苦しくて、朝早くに目覚めたのね。それでぼたんちゃんも遊ばしてあげようとゲージを開けたのよ。しばらく機嫌よく遊んでいたんだけど、突然ぼたんちゃんったら私の耳をかじったの。あんまり痛くて、私はベランダの扉を開けて逃げ出したわけ。そしたら、ぼたんちゃんが、私を追いかけて来たの。それで私の肩に乗ろうとしたのに失敗した拍子に驚いて外に飛び上がっていっちゃった」
 それは、朝の五時頃のことだ。しばらくは一人で近所を探していたのだが、見つからずにだんだん心配になってきて、仁の仕事を思い出したのだと言う。
 近所の動物病院、鳥の餌が置いてあるホームセンターやペットショップに二人はビラを貼り終え再び麻美宅前に戻りつつ仁は考えた。
 事件があった住居は、ちょうど麻美の部屋のある階と同じ三階であり、当時の風下にも当たる。仁は、捜査中の一樹を尋ねに行った。
「現場に生き証人がまぎれこんでなかったかなあ? インコのことだけど」
「えっ、なぜ知っているんだよ。確保している。鳥かごが無くて困っているんだ。彼女のインコ探しか?」
「そのぼたんちゃんが訪問したのは、朝の五時過ぎだ。自殺してから窓を開けられる奴はいない。何者かが、殺人現場に戻ってきて、暑くて無意識に窓を開けた……」
「留守にしていた同居の男が今朝八時前にマンションに戻って発見したと通報してきた」
「再調査、徹底的によろしく。鳥の出入りにご用心って、そいつに言っておいて」
 仁がつぶやいていると、インコが手掴みでパトカーに運ばれて来た。
「きゃあ、ぼたんちゃんよ。返して」
 麻美は警官に交渉するが断られ戻って来た。
「有難う、見つけてくれて。名探偵さん!」と麻美は仁に抱きついて喜びを伝えた。
「いい仕事しているじゃないか」
 一樹は仁を見て羨ましげに目を細めた。
 麻美はぼたんちゃんのために、自宅の鳥かごを提供するという申し出は許された。インコは証拠物件のひとつなのだ。
 数日後、一樹から仁に電話があった。
「同居人が自白して解決したよ。一応礼を言っとく、名探偵さん!」
 

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