池坊550二代広沢虎造「森の石松」 うなれTORAZO様!

2012年06月14日

ちょっと前の南行徳公園のバラ

はい、こんばんは。          雪華ホーム

南行徳公園のバラ


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2011年の秋からですが、NHKカルチャーセンター(梅田校)の『4枚小説を書こう』に挑戦中なんです。
講師は岡部義孝先生で、エッセイの講座もお持ちです。
半年の第1期が終わり記念文集も作ってもらい、↑写真の金平糖のご褒美(?)も頂き、来期もますますやる気満々の今日この頃でございます(まあ精神と、執筆力は別物ですがね)。

1600字という枠はたいへん短くて、とっつき易いかと思いきやとても難しいです。俳句や川柳などはその極致ですものね。通常のショートショートよりもさらに短くて、「すーぱーショートストーリー(通称SSS)」と岡部先生が名づけられました。教室では面白い作品がたくさんあるんですが、勝手に載せるわけにはいきませんので、ひ・み・つ。私の作品でお茶を濁して頂きたいと思っています
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      『こちら加藤仁探偵事務所』     牧山雪華
         2.会いたくない  
 
 仁は探偵事務所を立ちあげて三ヶ月が過ぎた。春の昼下がり、彼は事務所の奥の接客用ソファに座り爪を切っている。アルバイトの葵が、受付で大学の同級生へ宛て携帯メールに(浮気調査ばっか)と打ったところで、扉に着けられた鈴の音が二人に来客を知らせた。

「私の前の夫・拓郎を探して下さい。娘・詩織がまだお腹にいる間に離婚しまして。2年後、今の主人と再婚し、娘も実の父親のように慕っています。この度娘の縁談がまとまり、一ヶ月後の結婚式にぜひ、私が拓郎を招待したいのよ」                        
 颯爽としたスーツ姿の女性は四十九歳で聡子と名乗り、事務所に現れた。聡子の一人娘は、父に捨てられたと内心怨んでいるようにみえると話した。離婚後の彼女はまだ若く父親の権利など少しも解さずに、拓郎が娘に接触することを嫌ったせいなのだと説明してきたが、納得している様子はないのが不憫だと嘆いた。二枚差し出された拓郎の写真よりも仁は詩織の美しい写真の方に見とれた。「結婚当時はこんなに面白みの無い人だったのかと……。でも今は実直な人だったと思うのね。私の罪ほろぼし。結婚式に間に合えばいいけど」と仁に微笑んだ。
 その数日後、詩織から「母がそちらに伺ったそうですが、わざわざ探してまで会いたくないのです。先方も会いたくないのでしょう。依頼を断れないですか?」という電話がかかった。仁はしどろもどろになりながら「依頼人はお母様ですから」と弁明した。
 
 拓郎探しは難航していた。勤め先も住所も変わっていた。実家の両親は亡くなり、家は人手に渡っていた。他家に嫁いだ拓郎の妹がいたはずだという聡子の言葉を思いだした。
 来週に結婚式は迫った。仁は終に引越しの多い妹の連絡先を探り出し、(間に合うかも!)と喜び勇んで電話をかけた。                                                                               
「兄は、がんで亡くなったのです」という言葉に、仁は目の前が真っ暗になった。
「3年前のことです。実は、学芸会やら運動会、卒業式などには隠れて、兄は詩織ちゃんを見に行っていたのです。うれしそうに私に話しました。ですから写真などを「宝物」として大事にしていました。お葬式後に一人暮らしのアパートを片付けに行ったときにそれを探したのですが見つからなかったんです。」

 妹の言葉だけでも、大収穫だと仁は自分に言い聞かせるが、結婚式までもう三日しか残されておらず万事休すとソファにへたり込んだ。そのとき天気雨がパラパラと窓ガラスをたたいたかと思うと、以前にも現れた幽霊依頼人の美香がいつの間にか隣に座っていた。
「え? まだ、成仏してないのですか?」
「先日のお礼を持って参じました。お探しの写真等は、タイムカプセルを請け負う業者に預けられております。お父様は無口な方で聞き出すのにたいへん骨が折れました。これが、住所」と名刺を手渡し、かき消えた。

 独特の帽子モルタルボードを得意げにかぶり、笑顔をふりまいている詩織の顔がホテルの宴会場で次第に大写しにされた。
 仁は写真と共に保存されていたテープを持ち込んでいた。拓郎が入院先の外泊許可を無理して得て、渡米し卒業式の様子を初めて録画したという動画だった。
 その後突然、スクリーンは足もとの緑の芝生で画面いっぱいに覆われてしまった。
「すまない。詩織、こんなことしか、してやれなくって、ごめんな……」という拓郎の肉声が混入していたのだ。その直後、画像はぷつりと切れた。詩織は「お父さん? お父さんの声なのね!」と涙した。仁は会場のすすり泣きを満足げに聞きながら退出した。


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