Takarazuka Revue DVD 『Me & My Girl』Takarazuka Revue 『Classico Italiano』

2011年10月21日

『しんまい華道教授・花の甲子園へ』シリーズ第二弾!その1

はい、おはようございます。          雪華ホーム

  

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いけばな教室を巡る、悲喜こもごもを会話形式のお話にして綴っていこうというカテゴリをつくりました。どれだけ続けられるかわかりませんが。

これは、フィクションであり、登場人物や環境も全て架空のものです。が、当たらずといえでも、遠からじの逸話もありますので、ご自由に想像してくださいませ。

いけばなをとりまく環境はずいぶん時代とともに変わっています。私は今二つのパターンで、誤解や間違ったイメージにとらわれているんではないかと感じています。私たち世代は、お嫁入り前にお茶やお花を習っているのが当たり前な時代のたぶん、最後の世代だと思います。それ以降生まれの方たちにとっては、まったく未知の世界であるという方がけっこう多いですね。いけばなに対する反応を耳にして、こちらも驚くことが多いですし、いけばなをやっていない方たちとの間のギャップをものすごく感じます。周知のものと勝手に解釈していて、説明することを怠っていたりすることもひとつの要因かと思います。それを少しでも身近なものにできたらいいなあと試みました。そしてもうひとつのパターンです。それは、結婚する前にちょっと嗜んでいたわ、という方々にとってです。いけばなの表現方法は、古典芸能の側面もありますので、こちらの基本的な概念は、そうは変わりません。が、自由な発想を元とする芸術的な面は、相当変化しているはずです。不易と流行はともに必要なことですから、時代とともに進化していくいけばなもまたすばらしいものです。ここを、かつてのものと、リセットしていただく必要があるように感じています。

それらの思いをこめて、楽しいお話にできればいいのですが、・・・小説家でもなんでもありませんから、拙いものになりますが、ぜひ読んでみてください。

はい、雪華ちゃんシリーズ第二弾でございます(懲りずに)。
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<主な登場人物>

夏野雪華 :新米華道教授
夏野竹男 :雪華の夫
佐藤景子 :生徒、一番弟子
丸山明代 :生徒、雪華の姉的存在
河合洋子 :生徒、隣の奥様
河合瑞枝 :生徒、洋子さんの娘、名門私立女子校生
一条ゆかり:生徒、頑張り屋のママ
堀内 強  :生徒、景子の同僚
太田 舞  :生徒、美容院経営

伊藤 麗  :瑞枝のクラスメート
山口加奈 :瑞枝のクラスメート
後藤美紀 :瑞枝のクラス担任教師
山下大介 :瑞枝の学校の校長先生


<花の甲子園って?>

 杜の都仙台の厚い雲が散りじりにちぎれた後、欅並木の葉はところどころ赤く色づいた。街行く人々の服装は少しダーク色になり、心なしか早歩きになったように見える。冬支度が始まるのだろう。
 広瀬川流れる岸辺思い出は帰らずーたけちゃんのカラオケ18番である。この川の流れが永遠のように思える。ちっぽけな人間はどんどん年をとって変わって、ときどき理想を見失ったりするんだけど。自然はゆったりと受け止める。いつも変わりなくこちらを見つめている。だから、くじけてもまた自分なりにせいいっぱい頑張ってみて川に対峙したいような気にさせるのだ。
 夏の盛りに、雪華ちゃんは親先生から家元の京都で毎年催される花展に出してみないかという電話を受けた。OKの意思表示をしたまま何の準備もせず、月日はあっという間に過ぎ去り二桁の月となった。お稽古として使っている部屋には、試作中の小j品自由花が未完成状態で机の上に乗っている。終にお尻に火がついた。
 あの事件後の年明けに、サミール君とかれんちゃんの二人はめでたくゴールインしインドへと向かったために、生徒さんは二人減ってしまった。そして、何ということだろう月謝で頂いた金額よりも多くの結婚祝いが必要になった。うれしいのか悲しいのかわからない雪華ちゃんだ。盛大な結婚式がインド式に催されたようである。地元紙にも載ったようで、二人の笑顔の写真が丁寧な礼状とともに送られてきた。
 ところで、景子はサミール君には未練が無いのだろうかと、さりげなく雪華ちゃんは聞いてみたことがある。
「私達は性格が似すぎてるんですよ。補い合うぐらいがちょうどいいんじゃないでしょうか?それに、何もかも捨ててインドに飛び込めない。かれんちゃんでないとできないことです」という返事だった。失恋したわけではなさそうに見えたので、ほっと胸をなでおろした。
 ほっと胸をなでおろしたのは雪華ちゃんだけでないことは少し後でわかった。 
「大学教授が教え子の結婚招待状に恐怖を感じるという話を以前何かで聞いたけど、ほんまやな」たけちゃんに愚痴をこぼしながら、土曜日の遅めの朝ごはんであるバナナを食べている。
「人数が桁違いに多いけどね」と、たけちゃんはヨーグルトのふたをめくっている。「そろそろ寒くなってきたから、ヨーグルトは、温かくなる季節までやめとこうかな」
「変なの。冷えるの?」雪華ちゃんは、変わりにてっとり早く出せるものって、何があるだろうかと思案する。
 結婚当初は、朝ご飯にかりかりベーコンや目玉焼きや焼きたての食パンにバターをぬったりしていたものだ。それが今では、雪華ちゃんはたけちゃんと同じ時間に目を覚ますので冷蔵庫にあるもので、すぐに食べられるものが朝食の材料となった。平日、たけちゃんは7時前にはもう出社する、頑張り屋さんなのだ。
 朝ご飯の支度が難儀なほど、雪華ちゃんの華道教室の運営が忙しいわけではない。しかし、お稽古の前日に花屋さんへ行く必要があるし、当日は、午前中にそうじやら準備やら見本の花を生けておいたりする。お稽古は昼の部・夜の部とそれなりに時間が過ぎていく。そして、生徒さんたちは仕事をもっていることが多いので、お稽古日に残業や体調不良だったりして、翌日や場合によっては翌翌日に振り替えたりする日も出てくる。好きでやっていることなので、雪華ちゃんはいっこうに気にも留めないが、効率のいい仕事とはいえない。もっぱら、最近では道楽という言い方を好んで使っている。
 抜けた二人を埋め合わせるかのように景子の会社の後輩である強くんが入会したのと、洋子さんの娘さんである瑞枝ちゃんが新しく入った。舞さんの美容室も順調に開店して、お稽古に通えるようになったので、生徒さんの数は、トータル7人と一人増えた。
「瑞枝ちゃん、がんばってる?洋子さんに似て美人だよなあ」たけちゃんは、気になってしかたがない。
「そりゃあ、生徒さんだからかわいいに決まってるけど」
「制服着てくるの?」
「着替えてから来るわよ。ああ、学校から直接寄るときもあるけどね」
「やっぱり女子力あっぷには日本の伝統文化だよ。名門の女子高だそうだね。大学時代の教生の実習にそういう学校に行ってみたかったな」
「別に、男子でもいいんだけど私は」と、ニヤケたたけちゃんを牽制した。それから、はっと思い出したように続けた。「高校野球の『甲子園大会』みたいにね、いけばなを全国の高校単位で競う『花の甲子園』っていうのが、ちょっと前にできたの。私のまわりにそれくらいの年齢層の子が皆無だったから、他所事だと思ってたんだけど、その話をこの前にしたわけ。そしたら瑞枝ちゃんが乗り気になってるのよ」
「高校生で、いけばなを習ってる子は、今じゃあ珍しいんだろ?」
「そうよ、それで普及させたいっていう狙いもあるんでしょう。いろんな特典をつけて、まずは楽しんでもらうことからって感じ」
「腕を競うわけでしょ?」
「そう、一チーム三人が、それぞれ3瓶の作品を生けるの。花材は当日にしかわからないけれども、ひとつは地方色のある花材を持ち込める。45分間で、お片づけまで終えるのがルール」
「お片づけっていうのが、道っていうのにふさわしいルールだな」たけちゃんが感心しながら、珈琲を飲む。
 雪華ちゃんの朝食は、紅茶が定番だ。実家の家族も皆そうだったから。珈琲は大好きなのだが、朝一番にだけは、どうもお腹をやられる傾向がある。たまたまそうだったときの印象が強いだけなのかもしれない。人それぞれに向き不向きがあるようだ。たった二人の暮らしの中に発見がいろいろある。親密な長い同居生活をしている親族とは違う文化がそれぞれの家庭にあることを知る。わかっているつもりが、相手には理解されていないこともあり腹が立つこともある。相手を思いやっていても、意見が食い違うことなど日常茶飯事だ。夫婦といえども他人とはそうしたものだろう。そんな他人どうしが一緒にいることこそ意味も意義もあることなんだと雪華ちゃんは思うようになった。全ての源が愛であれば、どんないさかいも反目も乗り越えられないことはないはずだと信じている。
「まあね。その前に学校がうんと言わないと。でもよ、でもよ。洋子さんはPTAの会長でもあるから、発言力があるみたい。これはひょっとしてひょっとするかも。偶然に、景子さんもその学校のOBだし」
 雪華ちゃんの妄想はマックスに達する。楽天的な妄想しか抱かないのが特徴だ。
「まず、高校に華道部が存在してないと駄目だろ」
「そうよ、これから作るの」
「次に顧問の先生がいるだろ」
「そうよ、これから頼むの」
「華道部の部員がいるだろ」
「そうよ、これから探すの」
「誰がいけばなを教えて、甲子園まで導くんだよ」
「私に決まってるでしょ!」
 大口をたたいた雪華ちゃんだが、何のあてがあるわけではない。

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