週末に釣りに行きましたいけばなが近くにあるとね、体感温度が下がるっていう噂

2010年07月27日

しんまい華道教授・雪華ちゃんの事件簿 その6

はい、こんにちは。     雪華ホーム

  

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いけばな教室を巡る、悲喜こもごもを会話形式のお話にして綴っていこうというカテゴリをつくりました。どれだけ続けられるかわかりませんが。

これは、フィクションであり、登場人物や環境も全て架空のものです。が、当たらずといえでも、遠からじの逸話もありますので、ご自由に想像してくださいませ。

いけばなをとりまく環境はずいぶん時代とともに変わっています。私は今二つのパターンで、誤解や間違ったイメージにとらわれているんではないかと感じています。私たち世代は、お嫁入り前にお茶やお花を習っているのが当たり前な時代のたぶん、最後の世代だと思います。それ以降生まれの方たちにとっては、まったく未知の世界であるという方がけっこう多いですね。いけばなに対する反応を耳にして、こちらも驚くことが多いですし、いけばなをやっていない方たちとの間のギャップをものすごく感じます。周知のものと勝手に解釈していて、説明することを怠っていたりすることもひとつの要因かと思います。それを少しでも身近なものにできたらいいなあと試みました。そしてもうひとつのパターンです。それは、結婚する前にちょっと嗜んでいたわ、という方々にとってです。いけばなの表現方法は、古典芸能の側面もありますので、こちらの基本的な概念は、そうは変わりません。が、自由な発想を元とする芸術的な面は、相当変化しているはずです。不易と流行はともに必要なことですから、時代とともに進化していくいけばなもまたすばらしいものです。ここを、かつてのものと、リセットしていただく必要があるように感じています。

それらの思いをこめて、楽しいお話にできればいいのですが、・・・小説家でもなんでもありませんから、拙いものになりますが、ぜひ読んでみてください。
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<ミステリアスOL・景子の日常>つづき

 昨今は旅行業も統廃合の噂も出ているし、店舗を閉鎖して「ネット」営業に力を入れたりしている。その中でも景子は、夏休みの旅行の手配が忙しくて今月は休みをなかなかとれなかった。それで、智子達のリゾートウェディングが決まったら、翌日の月火と連続で休みをもらうことにしていた。

 景子は少し困った表情を隠した。智子は妊娠二ヶ月目らしくて、おめでた続きだと喜んでいたからだ。彼氏の伊藤さんは30歳前の、よく見ると陽に焼けた涼しげな目元のイケメンだった。智子のおのろけでは、看護師仲間でも、モテモテだったそうで、勝ち抜くのはたいへんだったのだそうだ。ライバルには今でも風当たりが厳しいらしいのだとか。

 伊藤さんもだんだんうちとけてきた様子がうかがえたが、たびたびケータイがなる。仕事用とプライベート用の二個が交代に呼んでいた。パリッと糊の効いたシャツやズボンの折り目正しさから、智子達はもう一緒に住んでいるのだろうかと、景子は思った。

 智子は小学生の頃に、父親を事故で亡くしていて、郡山の実家ではお兄さん家族と母親が同居している。

「景子は何でももっているお嬢さんだから、うらやましくって、ねたましくって仕方なかったんだから」
と同僚の直子に話始めたものだから、景子はあわててさえぎって、

「うちは、ほら両親が健在だからね」

「それだけじゃないの、ほんと、ぶっとぶような……」

「伊藤さんの所のご家族は?福島?もうご挨拶は済んでるんでしょう?、智子」

「それが、いろいろあってね、これからなの」

 景子は、少し気になったものの、できちゃった婚だって今はどうってことないだろうと深くは考えなかった。それよりも、智子の病棟話は支店長も直子も、後輩の強くんまでが集まってきた。

「お年寄りの個室が集まっているのよ」

「夜勤はたいへんだって聞いたことあります。僕は盲腸で学生のときに入院したことがあるんです」

「美人のナースにドキドキだったんでしょう」

「いやいや、お子さんいくつ?って聞かれたんです。僕、ふけて見えますか?」

「(爆笑)そういう人は、これから若くみられるからね。夜中に巡回するとね、おばあちゃんが、ボストンバッグを取り出してゴソゴソやってるのよ。『これから退院しますから、池内さん!申し訳ないけど、今日までの清算書をよろしくお願いしますね』って、おっしゃるの。とっても上品な方よ」

「夜中に」

「よくあることなの。仕方ないから、私池内(?)が確かに承りましたから、清算書をもってくるまでの間、時間がかかるから、ちょっと寝て待っててねって言って、偽の清算書を取りにナースステーションに向かったわけ」

「池内さんって名前に何か思い出があったのかしら?」

「その途中の廊下でドタンっていう誰かが倒れた音が響いてね、ドアを開けるでしょ。床にまかれた自分のおしっこで滑って転んでるの。この方をベッドに座らせて、床を拭いたり着替えをさせたりしなきゃいけないから、掃除道具一式を取りに行かなきゃって、部屋を大急ぎで出るの」

「ナイト・ミュージアム?」

「そうすると、廊下のずーっと奥の非常口のドノブをガチャガチャやってるおじいさんを発見するの。どうやら這いずってそこまでたどりついたようなので。うつぶせのまま、手をノブに伸ばしてて。『出してくれー』『お前は人間じゃない、助けてくれー』って、目をギンギンにさせながら悲痛な叫びを上げてるのよ」

「かわいそう、病院で虐待されてない?」

「冗談やめて〜寝てくれないことは明らかなので、部屋から車イスをもってきて『私は元木ですよー人間ですよー』って言いながら、ナースステーションまで押していって、預からなきゃいけないわけ」

「ナイト・ミュージアムよりスリリングだ」

「でしょう?、さて私はナースステーションに何と何を取りに行ったのでしょうか?」

「すげえ、尊敬ですね」

「看護師もたいへんだけど、ドクターも不眠不休で働いてるの。たいへんなのよ、ね」

と伊藤さんを見る智子。
「ストレスたまるわけよ。そんな時にこの人が支えてくれたの」

「ごっちそーさま。やっぱりそこに戻りますね」

 と、みんな盛り上がったものだ。景子はオーブントースターからいい匂いのパンを取り出し、熱いコーヒーマグと一緒にトレイにのせて、ダイニングテーブルに置いた。

 あのとき、強くんが伊藤さんの肩にそっと手をおいたとき、なぜかはっと驚いた様子だった。あれは、なんだったんだろう、と思い出す。


 景子の母は、回遊式の見事な日本庭園を少しうっとおしいと思った時期があり、その横にせっせと、イギリス式のバラの園を業者とともに構築した。景子が中学生の頃のことだ。

「ママ、アンバランスじゃない?」

「いいのよ、世界の庭をいろいろ作りたいの」

「ママの時代とは違って、何でも欧米のものがいいっていうのはこれからは流行らないって」

「誰が言ったの?」

「パパ」

「パパはね、車だって、時計だって日本製が一番っていう人だもの、ブランド力を期待しないのよ」

「費用対効果を考えるんだって。でもそれは経済の問題であって、今言ってる、文化の問題じゃない」

「費用対効果って言ってもね、映像設備や音響システムの凝りようを見てみなさいよ。パパったらいったいいくつ買ったら気がすむのかしら。スピーカーのね、価格が二倍したって、音が二倍良くなりますか?ほんの数パーセントの音域が広がる程度のことよ。パンフレットに書いてあるわ。へたすると、人類の耳が知覚するかどうかも怪しいもんだわ」

「人って、他人のことには論理的に判断できるのね」

「景子はパパっこよね」

「私は、日本庭園が好きだなあ。あの場所にはローズガーデンよりも、常緑樹の林にして、緑の背景にしたらいいのに」

「へー!そうなんだ」

 不思議がっていたママも、その後改心したらしく、お気に入りの庭師も変えた。景子は海外での二年間の生活で、自分こそ日本のことを何も知らなかったのだと気づいた。いろんな言語を操り、他国の文化を理解し、欧米人と互角に付き合う姿が、真の国際人の姿であると必ずしも思えなくなった。尊敬される国際人はきっと、自国の文化や伝統や歴史に裏打ちされた核になるものを持っていると思った。

 だから、手始めに「いけばな」を習ってみようかなと考えたのだ。なんでも良かった。お茶でも武道でも。


 朝食の後、デパートに出かけた。そのあとは書店に行く予定だ。初心者用の水盤と剣山を買った。ハサミは庭バサミがあったから、買わなかった。あとの道具類は初日に先生に尋ねてからそろえようと思っている。新しいことを始めるのは、いつだってワクワクする。

 よく来るこの辺りでは一番広い書店だが、趣味のコーナーには普段足を運んだことがなかった。いけばなに関する本は意外に少ない。コミックもあった。植物図鑑が目に留まった。花の名前は同じ年頃の友人に比べれば知っているほうだと思ってはみたが、パラパラっと頁をめくってみると知らない植物だらけでがっかりした。これも買ったほうがいいだろうかと、少し迷ったが、今度にした。結局、どの本も立ち読みしただけだったが、いけばなの写真をたくさん見ることができた。何がどういいのかわからないけれども、好きだなって思うものも、何だ、これは?って思うものものまで様々であった。

 仙台の七夕は夏のビッグイベントだ。その舞台のひとつがこのアーケードのある広い商店街であり、この近くには景子の好きな勾当台公園がある。こうやって、ぷらぷらできる休みはやっぱりいいものだと、あっちの店、こっちの店を覗いてまわる。さすがに暑くなってカフェに入ったらもうお昼の時間はとっくに過ぎていた。

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この記事へのコメント

1. Posted by mutsumi   2010年07月28日 18:22
先生お久しぶりです。
春先には訳のわからない電話をおかけしてしまって申し訳ございませんでしたm(__)m
なかなかお手紙も出来ず、すみません。。。。
季節柄もあったのかもしれません。復活しました!
ありがとうございました。


今日の仕事の合間にラーメンを食べていたら、先生とも近所のラーメン屋さんで一緒になったなあ・・・なんて思い出し、久々にブログを拝見したら、小説が!!
仙台なつかしいですねえ----。あれから10年以上たったのですね。。。
いまでもお稽古のノートと写真を見て、懐かしく思うことがあります。

フィクション小説ですが(笑)、あの時のフリーペーパー、今でも鮮明に覚えてます。おかげさまで先生と出会えて、今振り返ると、フリーペーパー様様ですよ。

これからもブログ楽しみにしています。
いつか仙台で、Sちゃんたちと一緒にお食事出来る日を楽しみにしています!

毎日暑いですのでご自愛ください。
小説楽しみにしてます(^-^)
2. Posted by 雪華   2010年07月29日 20:38
mutsumiさま♪こんばんは。

こちらこそ、ごぶさたしてます。コメントありがとうございまーす。お元気そうでなによりです。

なんか、早いわね、10年前か。あのラーメン屋さん、まだあるかしら。仙台、懐かしい〜お稽古に関しては、ああすれば良かったとか、もっとこうすれば良かったのにっとか悔いもあるのですが。

あの小説の景子さんのモデルは、mutsumiさまに近いですね・・・。そのうちに活躍する予定・・・ふふ。Sちゃんにもよろしく。

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