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2008年05月30日

DVD「無法松の一生」観たよ

はい、こんにちは。     雪華ホーム

無法松の一生
無法松の一生三船敏郎 高峰秀子

おすすめ平均
stars三船を本物の雪の中で演技させた!
stars気高いダンディズム。
starsたからもの。
stars日本映画を代表する作品「無法松の一生」
starsおとこの生きかたとして

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松っつぁんのキャラが、今も頭の中をぐるぐるしていまして、後を引きます。侍姿の迫力でもなく、東宝ニューフェイスとしての二枚目俳優としてでもなく、軍人姿の重厚感でもなく、それにしても、ミフネさまはいくつの顔をお持ちなのでしょうか。「いきものの記録」では、35歳のときに70歳の役を演じてますし。ミフネさまには全く、幻惑され、驚かされ、そして魅了されっぱなし・・・こちらでは、まん丸お目目の赤ちゃんの頃の写真が見られます。この世にいない人だとは思えないのです、この圧倒的な存在感をどこの国のファンにも持たれてるんでしょう。・・・

明治30年小倉を舞台に。
義理人情は理解してるみたいだけれども、けんかっぱやくって、いつも事件をかかえているような、松五郎、通称無法松。お父さんはばくち打ちで、家に帰らないし、お母さんは、継母でよく叱られていた不遇の少年時代で、小学校にも行けなかったんです。寂しくて、寂しくて、遠く離れたお父さんをなんとか家に戻って来てほしくって、訪ねて行ったこともありました。無法松が、生涯でわんわんと大泣きに泣いたのは、あれが最後だったと回想している場面があります。たった8歳の子供が、かなわない望みは捨てなきゃだめだと悟った瞬間だったと思います。

それ以降、自由奔放にわが道を生きています。根がとっても親切ですから、そんなときの、お礼にお金を包まれても、「商売とは、別のことですから、わしらこと、つまらんもんでも、損得を離れてやることもある」って断る、潔さと気風の良さが誇りです。そんなところも見込まれて、偉い軍人の未亡人とその一粒種の少年の世話をすることになったんです。その無くなった吉岡さんというご主人も、たいそう松っつぁんをかっていましたから。車屋さんを生業としているので、かけっこは得意だし、けんかは強いし、気弱なぼんぼんをなにかれと気にかけて、ほんとによく、めんどうを見てあげていました。男手の必要なところは全て彼が引き受けていますし、庭掃除だってやります。この頃には、お酒も馬鹿なことも全くやらなくなり、無法松ではない、とてもまじめな松っつぁんでした。少年はもちろん、すっかり頼っていますし。とっても短かったけれども人並みの幸福に包まれたのです。学芸会では、ぼんぼんが一番、良かったって本当の親じゃないけれども、見事な親バカっぷりを見せています。他人から、奥さんがきれいなのをやっかんで、あやしいんじゃない?なーんてからかわれても、そんな気はこれっぽっちもない、見返りをもとめない奉仕でした。

人は、ずーっと孤独だと、慣れっこになって特に孤独とは感じないのでしょうね。ぼんぼんはやがて大きくなって、熊本の学校にあがることなり、親離れしていくのです。思春期の青年ですから「人前で、ぼんぼんって、呼ばないで」って言われます。美人の未亡人も、悪いとは思いつつも、こんな事情だから、「吉岡さん」っとでも呼んでくださいね、って簡単に返事されます。「他人様のようじゃのう」ってふと思います。未亡人が、ことあるにつれ、成長していくわが子を見て、寂しいわあ、私は一人ぼっちになるわあとつぶやきます。それを悲しい目でただただ聞いています。が、松っつぁんも、全く同じ気持ちでいたはずなんです。

この頃から、松っつぁんは、お酒を飲み始めます。父親がお酒が原因で心臓をやられたのをよく知っているにもかかわらず、です。義理人情の世界の方が松っつぁんには分かりやすかったでしょう。とっても純粋な「まっつぐ」な性格でしたから。かなわぬ望みはもたないことを決意してから、決して泣かないと誓ったときから、半分の心はしっかり閉ざされたままだったのでしょう。それが、未亡人の奥さんの美しさと人柄でもって、だんだんと開けられていったのですよね。愛情は、やっかいなもの。甘味な充足と孤独は表裏一体、一人でいることの孤独を初めて知ります。飲み屋さんで、友達は、お前も早く嫁をもらえ!って知り合いを薦めます。そんなことはどうでもよくって、松っつぁんは、お酒の広告ポスターに出ているモデルさんと奥さんの顔がボーッと重なるんです。その、広告をもらえるように、店主に頼むんですけど。「酒の広告のべっぴんなら、飯食わすことないだろ?」って。お金など、なんの惜しいこともない、松っつぁんなんですが、言葉と心が裏腹です。まっつぐの心がネジネジ状態に突入です。

夏休みに久しぶりに帰省したぼんぼんは、学校の先生を伴っていました。自分に学があれば、まだまだ、ぼんぼんの役に立つかもしれないと、思ったんじゃないかと思います。その先生が太鼓を楽しみにしていたこともあり、いやあ、お祭りのときの松っつぁんの祇園太鼓はかっこよかったあ。

それに引き換え、その夜の花火を奥さんといっしょに見てるときの松っつぁんは、借りてきた猫みたいにおびえて、卑屈になっていました。奥さんは、愛息と先生という客人がいることもあって、珍しくお化粧なんかしていましたし、あんまりきれいだったから、思わず見とれて「きれいだなあ」「これじゃあ、先生もなかなか、熊本に帰れないなあ」なんて、やきもちのセリフが出たりして・・・切ない。もう、心の中は、ぐっちゃぐちゃにかき乱れる一方のかわいそうな松っつぁん。ついに、座敷に上がりこんで亡き吉岡さんの遺影に土下座しながら、「もう、奥さんとはお目にかかることはありません」って、お別れを言います。「寂しかったんだ」ポツリと本音。「俺の心はきたない」って言い捨てて飛び出してしまいます。心の中で、松っつぁんは、わんわんと泣いていました。泣くことを思い出していたと思います。

どうよ、これ。
「イライラする〜」って思った方?。身分が違いすぎるから、難しすぎるけど、「当たって砕けろ〜」って、思った方?。うーん、ちょっと、思うかな私(笑)。「きたない心では、ないよー」「松っつぁんは一人ではないよー」って言って抱きしめてあげてほしかったなあって、奥さんに文句を言いたいしい、どら息子も、ちっとは松っつぁん孝行せんかい・・・などと思ったりもします。でもね、それを聞いたなら、松っつぁんという人は、烈火のごこと怒って、二人をかばうことでしょう。そんな人なんです、無法松は。くーっ。男心は難しい。

ありふれたストーリーなのかもしれませんが、色あせない名作だと思います。ベネチア国際映画祭のグランプリです。この、感情は日本人だけのものでもないんですね。ブラボー!でございました。

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