クルクマを睡蓮に見立ててガラスの水盤にホテイアオイ

2006年07月28日

ユーモアとペーソスから迫る芭蕉像NO.38

8752fa9e.jpgおわりに(卒論執筆当時の感想)

 たいへん長かった。たった十七文字を読みとることが、こんなにも苦労が多いとは思わなかった。今はとりあえず終えたことの喜びで一杯だが、内容は果たしてどれほどのものであったか、心もとない。
・・・


 芭蕉の俳諧のジャンルは見てきた通り、たいへん幅広い。私は、その中でもユーモアのあふれる、どちらかと言えば明るい作品が好きである。しかも、晩年のあまり、和歌等の典拠を必要としないものが良いと思っている。それは、和歌の知識が全く無いからであり、古典の勉強の必要性を感じている。勉強不足の自分への言い訳だけでなく、ユーモアは、単純なものほど普遍的なのかもしれないと感じていることもある。教養の差や文化の差や言語の差さえも、あらゆる壁を乗り越えることができるものは、案外説明のしようのないものだったりするのではないだろうかと思っている。こんな簡単な感想と、『芭蕉文集』中の解説者、富山奏の言葉を引用して結びとしたい。
 「八九間空で雨降る柳かな」の句を例として、(さきほどまで降っていた春雨は、もうやんだのに、何と八九間の空の高さから、ここだけは雨が降り続いていることよ、この大木の柳の下だけは。)と雫がまだ滴り落ちるさまを八九間の空と言いたてて興じたのである。興じつつ、春雨の降る中に柳がけむってみえるという典型的な和歌の風雅を詠んでいる。そのことに続けて、「興じた表現手法に気付かず、且つ明治以降の写生説に毒されてしまった多くの注釈書は、この句の和歌的風趣を賞賛するだけで、肝腎の著しい俳諧的興趣を解明し得ないでいる。いわば内在する伝統的風雅だけを喧伝して、折角興じてみせたユーモラスな俳諧スタイルには全く無知である。」というように。

 この度、○○助教授にはたいへんお世話になりました。また、ご迷惑もおかけしました。ご指導により、良くなっているところがあるとすれば、アドバイスのおかげです。なかなか原稿がすすまず、添削していただけなかった部分が相当あり、まずい部分はそのためであります。末筆ながらお礼申しあげます。
 ゼミの方々との交流も楽しく、たいへん参考になりました。ありがとうございました。



参考文献

『芭蕉自筆 奥の細道』上野洋三・櫻井武次郎編集 岩波書店 一九九七
『奥の細道物語』岡本勝             東京堂出版 一九九八
『松尾芭蕉 物語と史蹟をたずねて』嶋岡晨    成美堂出版 一九九四
『芭蕉連句古注集 猿蓑篇』雲英末雄編      汲古書院 一九八七
『松尾芭蕉集』井本農一・堀信夫・村松友次 校注・訳者
                        小学館 一九七二
『芭蕉文集』富山奏 校注 新潮日本古典集成   新潮社 一九七八
『芭蕉句集』今栄蔵 校注 新潮日本古典集成   新潮社 一九八ニ
『芭蕉の謎 蕪村の謎』茂原輝史 編集 国文学 第三十六巻十三号 
                        学燈社 一九九一
『芭蕉必携』尾形仂編              学燈社 一九八〇
『奥の細道 空白の一日』宮誠而         北陸美術出版 一九九六
『芭蕉鑑賞』荻原井泉水             潮文社 一九九八
『唐詩の世界』入谷仙介             筑摩書房 一九九〇
『俳諧世界別冊一 芭蕉解体新書』川本皓嗣・夏石番矢・復本一郎編
                        雄山閣出版 一九九七
  うち『芭蕉と滑稽ー俳句の詩性』乾裕幸 一○八頁から一一八頁
    『芭蕉とことばのちからー芭蕉の俳言の構造と意味』須藤徹 
                     一三二頁から一四一頁
『新潮古典文学アルバム 十八 松尾芭蕉』雲英末雄 編集・執筆
                        新潮社 一九九○
『芭蕉 その鑑賞と批評』山本健吉        新潮社 一九五七
『芭蕉庵桃青の生涯』高橋庄次          春秋社 一九九三
『芭蕉七部集(古典講読シリーズ)』上野洋三   岩波書店 一九九二
『芭蕉とユーモアー俳諧性の哲学』成川武夫    玉川大学出版部 一九九九
『芭蕉歳時記』乾裕幸              富士見書房 一九九一
『芭蕉と西鶴の文学ー前近代の詩と俗』乾裕幸   創樹社 一九八三
『ことばの内なる芭蕉』乾裕幸          未来社 一九八一
『日本の近世』第六巻 情報と交通 丸山雍成編  中央公論社 一九九二
『江戸川柳辞典』浜田義一郎           東京堂出版 一九六八
                                   以上。


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この記事へのコメント

1. Posted by γーGTP   2006年07月28日 23:36
雪華さん、こんばんわです!
すごい!雪華さん、文学部だったのですか??ちなみに私は日本文学専攻でしたよ!辞めちゃったけど(笑)
奥が深いですよね〜◎芭蕉の色々を是非、伊賀上野にて!!アップ楽しみにしてます(・ω・)/
2. Posted by 雪華   2006年07月29日 10:05
γーGTPさま、おっはよーございます。

これは、30過ぎてからお勉強した放送大学での卒論なんです。生徒たちはみんな、働きながらだったり、子育て中だったりで、いろんな忙しい環境なんでしょうけど、私は極楽トンボで楽しい思い出です。

芭蕉生誕の地ですもんね。三重はいつもは、日帰りコースなんですけど、お盆休みにゆっくりしてこようかと思います。はーい、ありがと。
3. Posted by millefleurs   2006年07月30日 23:11
雪華さま、こんばんは。
素晴らしい!放送大学でお勉強するとこんな素晴らしい論文が書けるようになるのですか?(誰でもってわけはないのでしょうが)
大人になってから意思を持って勉強すると、とても深くその世界に入っていけるのかもしれませんね。大学時代、もったいなかったって卒業してから何度思ったことか・・・
話ぜんぜん飛びますが、伊賀のカバ丸っていませんでした?
4. Posted by 雪華   2006年07月31日 12:00
millefleursさま、こんにちは。

はは、お恥ずかしい。
体で覚えこまないといけないようなものって、やっぱり、それなりの年頃に叩き込まないと、もう、手遅れですー(笑)。

カバ丸???何でしたっけ???

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