”つつじ”も見頃ね。ご訪問ありがとうございます。雪華はお留守です。

2006年05月01日

ユーモアとペーソスから迫る芭蕉像NO.32

5bd7a551.jpg   初雪や幸ひ庵にまかりある
 (貞享三年、四十三歳。待ちに待った初雪の日に、幸いにも草庵に居合わせたことでござるよ。)
 「まかりある」は「居る」の謙譲語であり、改まった口調が大げさで、むしろユーモラスに興じている態度を表している。初雪を子供のように喜んでいる様が目に浮かぶようだ。これと同様のうきうきした感じを雪だるまの句でも詠んでいる。
 「君火を焚けよきもの見せん雪まるげ」(よくおいでなされた。炉の火を焚いて茶でも煮ながら温まり給え。私はよい物を作ってお目にかけよう。庭の雪で雪まるげでも作ってさ)という句である。雪まるげは雪をころがして丸く大きな塊にしたものらしい。風狂の無邪気な遊心と客人をなんとかよろこばせようとする心がほほえましい。・・・


   げ屬留西發肋緻遒浅草か
 (貞享四年、四十四歳。遠く雲と見紛う絢爛たる桜の花の中から鐘の音がかすかに響いて、朧な花の上をたゆい、けだるそうに春の空にきえてゆく。あれは、上野の寛永寺の鐘か、浅草の浅草寺の鐘か、)
 去来によると、「鐘隔寒雲声到遅」の詩句に思いを寄せた作とある。雲があんまり厚いと音も隔てられてゆっくり、たどりつくというような、誇張を下敷きにしているようだ。雲と鐘の音という取り合わせから、はるかな国を連想したり、吉野の桜を連想させたりしつつ、一転して、江戸の人々に親しみのある地名をもってくることで、滑稽味をもかもし出していると考える。「だけど、この音はどこからだろう」とふと幻想の世界から現実の世界へ戻ってくる面白みがある。
 のどかな春の気分を盛った作であることはもちろんである。「上野か浅草か」の「か」は軽い疑問に詠嘆を含み、それと定め難い、おぼろな感じがよく出ている。

   テ麁にもぬかりはせじな花の春
 (元禄元年、四十五歳。元日は寝過ごして大しくじりをやったが、二日にはしくじらぬよう心がけて、めでたい正月を祝いたいものよ。)
 郷里伊賀上野で元日を迎えての歳旦吟である。郷里ですっかりくつろいでいる様がユーモラスに伝わってくる。自分の失敗談で笑わせようというのは滑稽の基本であると思う。
『三冊子』に、芭蕉の言葉として、初五に、「二日には」とすべきところ、平凡を嫌って、「にも」としたとある。

   手鼻かむ音さへ梅の盛り哉
 (元禄元年、四十五歳。花盛りの梅の傍らで無造作に手鼻をかむ音がする。そんなはしたない音さえも、野趣を感じさせて快い、静かな山里である。)
 梅咲く頃のさわやかな山里の風趣を手鼻の音で言い止めた。巧みな俳諧的卑俗美の世界である。手鼻と梅というとてつもない取り合わせに驚きと笑いが起こることをねらったものと考える。
 この「取り合わせ」の問題は重要な点であると思われる。わずか十七文字の中に意味を様々に込めるためには、言語そのものにすでに内在する要素を巧みに利用したり、あるいは、異質性の混乱を招くことで、新しい意味を創作したりすることができるからである。乾裕幸は、他の日本の古典芸能との共通性を指摘し、「俳諧において日常的通俗言語を文学言語にまで高め上げようとする営為と生活芸能において日常的通俗行為を「道」の次元にまで高め上げようとする営為には、あきらかに共通する精神がみてとれる」としている。


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この記事へのコメント

1. Posted by γーGTP   2006年05月02日 00:35
雪華さんこんばんわです★
昨日藤棚のところにコメント書いたつもりが書けてませんでした(・ω・;)しばらく本当に雪華さんちの庭かと信じてました(笑)
いやぁ、芭蕉いいですね◎ちなみに東京の上野は三重県上野市の上野からとってつけられたそうです。ええと、聞いた話なのですけど(汗)
2. Posted by millefleurs   2006年05月02日 08:37
雪華さま、おはようございます。
芭蕉の句、学校で習ったものしか味わったことなかったのですけど、
こちらで読ませていただいて感じ入っております。ありがとう。
つつじとたんぽぽの綿毛、いいショットですね。ほっこりです。
明日からのご旅行、楽しんでいらしてくださいね。
3. Posted by 雪華   2006年05月02日 16:58
γーGTPさま、こんにちは。

どうもどうも。昨日、私もコメント欄がおかしくって、2個送ったりしていました。
あとで、祭り上げられるんでしょうけど、聖人君主みたいじゃないとこが、いいですよね。

へー、そうなんですか。三重の方が先なの。
4. Posted by 雪華   2006年05月02日 17:03
millefleursさま、こんにちは。

いつも、お礼を言っていただいて、恐縮でございますよ。
millefleursさまのお人柄でますます教室は繁栄することでしょうね。

たんぽぽの綿毛、うまく撮れた気がするんです
なごんでもらって、良かったあ。

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